PixAI攻略本

どのモデルを使えばいいのか — 公式が「SDXL」としか書かない部分を突き止める

モデル共通なぜ SDXL 中心なのか

最終更新 2026-09-08

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目次(10 項目)

⚠️ 先に、公式の位置づけを書いておきます。 PixAI が最上位に置いているのは DiT 系の Tsubaki.2(2026年3月リリース)で、公式ドキュメントは「プラットフォーム上で現在最強の画像生成モデル」とし、SDXL 系のほうを「従来の」と呼んでいます。次の Tsubaki.3 も2026年8月12日から先行体験が始まっています。

この本に SDXL 系の記事が多いのは、安く大量に回すことを主題にしているからで、SDXL がおすすめだからではありません(このサイトについて)。以下は、その前提のうえでの比較です。

PixAI の日本語ドキュメントには、モデルの一覧表があります。そこには「DiT」か「SDXL」かしか書かれていません。

これでは足りません。 SDXL 系のモデルは、どの系統から来たかによって効くプロンプトが変わるからです。masterpiece が効く系統と、score_9 が要る系統と、年代タグが使える系統がある(品質タグの記事)。

探したら、英語版の別のページに書いてありました。

系統は LoRA 学習ガイドに載っている

見つけたのは公式ブログの LoRA 学習ガイドで、モデル選びの記事ではありません。ベースモデルの一覧表があり、こう分類されています。

ファミリー 該当モデル 公式の説明
Illustrious Haruka, Hoshino, Otome High-quality anime styles
Noob(NoobAI) Hinata V2, Hikari Vibrant, dynamic compositions
SD 1.5 Legacy models ⚠ NOT compatible with SDXL LoRAs

原文の一行を引きます。

Always train on the base model you regularly use for generation. If you typically generate with Haruka V2 → train your LoRA on Haruka V2.

つまり Haruka v2 と Hoshino は Illustrious 系、Hinata V2 と Hikari は NoobAI 系です。 日本語のモデル概要ページには、この情報がありません。

⚠️ この表が答えているのは「LoRA の互換性としてどの系統に属するか」であって、「具体的にどの版から派生したか」ではありません。Illustrious の v0.1 なのか v1.0 なのか v2.0 なのかは公開されていません。ここは後で効いてきます。

系統が分かると、書くものが決まる

系統が判れば、これまでの記事の結論がそのまま当てはまります。

Haruka v2 / Hoshino / Otome(Illustrious 系) Hinata V2 / Hikari(NoobAI 系)
masterpiece best quality 効く 効く(定義が公開されている)
very aesthetic ⚠️ Illustrious の公式カードには記載が無い(後述) —
newest などの年代タグ — 効く
score_9, score_8_up... 不要 不要
ネガティブの品質タグ 効く 効く

そして重要なのは、この表に Pony 系が一行も無いことです。

PixAI が公式モデルとして挙げているものの中に、Pony 系はひとつもありません。にもかかわらず、score_9, score_8_up, score_7_up という呪文はプロンプト例として出回っています。公式モデルで使うかぎり、あれは要りません(品質タグの記事)。

「版が不明」がなぜ問題になるか

Illustrious 系だと判っても、very aesthetic を足すべきかが決まりません。

⚠️ そもそもこの語が Illustrious の公式カードのどこにも書かれていません。 2026年9月7日に v0.1・v1.0・v1.1 のモデルカードを確認しましたが、どれにも very aesthetic は出てきません。第三者の解説がそろって「v1.0 以降で使う」と書いているだけです。⚠️ ただし「どこにも根拠が無い語」ではありません。 別系統の NovelAI は V4 の発表で、既定の品質タグにこの語を入れています(, best quality, very aesthetic, absurdres)。「Illustrious の公式推奨としては裏が取れない」までが言えることです(品質タグの記事)。

分かっているのは、v0.1 の base モデルが「aesthetics / preferences 向けにチューニングされていない」と自ら書いていることだけです(そのため通常用途には v0.1-GUIDED を勧めています)。版によって aesthetic の扱いが違うらしいところまでは言えますが、very aesthetic という語がどの版で入ったかは分かりません。

したがって Haruka v2 で very aesthetic が効くかどうかは、公開情報からは決められません。

そこで「1語だけ足して差を見れば判定できる」と考えて、実際に出してみました。結論から言うと、この方法は使えませんでした。

very aesthetic を外した1枚 は、たしかに基準と違う絵になりました。ところが同じ実測で、Danbooru に0件の medium shot に置き換えた1枚 も大きく変わっています。

つまり 語を1つ変えれば、その語が効いていなくても絵は変わります。プロンプト全体がひとつの埋め込みに変換される以上、無視される語でも列が変われば結果は動く(ネガティブの記事)。

「差が出た」は「効いた」の証拠になりません。

判定するなら、変化の向きがその語の意味と合っているかまで見る必要があります。very aesthetic で変わったのは衣装の種類で、美的な指定として効いたようには見えませんでした。判定は保留です。

余談系統表を拾うときは、出どころを見てください

⚠️ ここは出典を挙げられません(個人の投稿を名指しすることになるため)。読んだうえでの注意書きとして書きます。

モデルの系統をまとめた一覧は SNS などに流れていますが、投稿者自身が「非公式情報」と断り、生成AIに作らせたと書いているものがありました。その一覧は同じモデルを「DiT 系」と「Illustrious 系の SDXL」の両方に置いていて、内部で矛盾していました。公式は SDXL だと明記しているので、前者は誤りです。

AI が作った一覧を AI が読んで広める、という循環が起きやすい領域です。系統は公式ブログの表で一行で確定するので、拾ったものを信じる前にそこを見るほうが早いです。

DiT と SDXL は何が違うのか

もうひとつの分岐が、アーキテクチャです。ここは論文まで戻れます。

DiT は 2022年の論文で提案された構成で、拡散モデルの中身を入れ替えたものです。

replacing the commonly-used U-Net backbone with a transformer that operates on latent patches

U-Net をやめて、Transformer に置き換えたわけです。SDXL は U-Net 側、Tsubaki は Transformer 側にあたります。

論文の主張はこうです。

DiTs with higher Gflops -- through increased transformer depth/width or increased number of input tokens -- consistently have lower FID

計算量を増やすほど品質が上がり続ける、という性質です。U-Net はここで頭打ちになりやすい。Tsubaki が公式に「フラッグシップ」と置かれ、そのぶんクレジットが高いのは、この性質の裏表です。

そして、プロンプトの書き方が違う理由もここにあります。Transformer は言語モデルと同じ構造なので、文としての条件を扱いやすい。だから Tsubaki は自然言語で書けて、Haruka はタグを並べる形になります。

余談「計算量を増やすほど良くなる」は褒め言葉なのか

この性質は、裏返すと「計算量を減らすと素直に悪くなる」という意味でもあります。

SDXL 系が PixAI で安く回せるのは、DMD2 という高速化 LoRA で8ステップまで落とせるからです(パラメータの記事)。ところが同じ手が DiT 側には用意されていません。

つまり Tsubaki は、論文どおり「積めば伸びる」設計であるぶん、値切る余地が少ない。高品質と高コストが同じ理由から来ているので、片方だけ持ち帰ることができません。

実務上、何が変わるか

SDXL 系(Haruka / Hoshino / Otome / Hinata) DiT 系(Tsubaki)
プロンプト Danbooru タグを並べる 自然言語で書ける
LoRA SDXL 用が使える SDXL 用は一切動かない
参考画像 使える Tsubaki.2 は非対応
ステップ数・サンプラー・CFG・VAE 使える Tsubaki.2 は4つとも非対応(Tsubaki.1 は使える)
顔修正・HiRes・アップスケール・バリエーション 使える Tsubaki.2 は4つとも非対応(Tsubaki.1 は使える)
LoRA 学習費 75,000 200,000
学習時間 15〜30分 Tsubaki 約70分/Tsubaki.2 約2時間
学習のベースにできるか 系統内のモデルを選べる ⚠️ Tsubaki と Tsubaki.2 だけ(v1.1・Flash・Serin は不可)
ネガティブ 使える Lite / Standard では使えない

⚠️ Tsubaki.2 でつまみが消えるのは、このサイトの読み方にも関わります。 ステップ・CFG・サンプラーを扱った記事は、Tsubaki.2 では検証する対象そのものが画面に出てきません(ステップ数・パラメータ)。モデル系統のタグを付けているのはこのためです。

DiT 側の「速く安く」は、LoRA ではなく別モデル

SDXL の DMD2 に相当するものが DiT 側にあるかを確かめました。あります。ただし仕組みが違います。

Tsubaki Flash という、Tsubaki の公式高速版モデルが存在します(学習のベースには選べない生成専用モデルです)。公式ガイドはこう説明しています。

Tsubaki Flash — Official high-speed version of Tsubaki. High LoRA compatibility, especially with LoRAs trained on original Tsubaki.

⚠️ DMD2 が「同じモデルに後付けする LoRA」なのに対し、Tsubaki Flash は「別モデルに乗り換える」方式です。 そのぶん Tsubaki 用に学習した LoRA がそのまま高い互換性で動く、という設計になっています。DiT.2(Tsubaki.2)向けの高速版は、公式のモデル一覧(2026年9月10日確認)には出ていません。

LoRA が動かないという一点が、いちばん重い制約です。アーキテクチャが違えば LoRA は読み込めません。集めた LoRA も、自分で学習させた LoRA も、乗り換えた先では全部無効になります。

⚠️ そして、新しく作られている LoRA は DiT.2 側に寄っています。 2026年9月8日にモデルマーケットのトレンド上位を数えたところ、LoRA 20本のうち19本が DiT.2 向けで、SDXL 向けは1本でした(トレンドの算出方法は非公開なので、1回のスナップショットとして読んでください)。SDXL 側に LoRA を貯めるのは、供給が細っていく側に賭けることになります。

クレジットで比べると、順位がひっくり返る

「SDXL のほうが安い」と言われますが、条件を揃えると逆になります。

3:5・4枚まとめでそろえた1枚あたりです。

構成 1枚あたり
Haruka v2 + DMD2・8ステップ 50
Tsubaki.2 Lite 550
Haruka v2・28ステップ(公式デフォルト) 700
Tsubaki.2 Pro 1,700

デフォルト同士なら、Tsubaki.2 Lite のほうが Haruka v2 より安いのです。

SDXL 系が安くなるのは、DMD2 で8ステップまで落とせるからです。 そこまで落とすと PixAI の下限(1回200)の枠に4枚ぶんが収まり、1枚あたり50になります。Tsubaki.2 Lite との差は11倍。モデルが安いのではなく、下限の傘に入れるかどうかの差です(クレジットの記事)。

決め方

先に決めるべきものは1つだけです。

LoRA を自作するか。

自分で学習させるなら SDXL 系のほうが安く済みます。 学習費が約1/3で、時間も Tsubaki(DiT.1)比で半分以下、フラッグシップの Tsubaki.2(DiT.2)比では4分の1以下です。そして貯めた LoRA は乗り換えのたびに無効になるので、資産が増えるほど動けなくなります。だから最初に決めておく価値があります。

⚠️ ただし、どちらに寄せるかは費用だけでは決まりません。 他人の LoRA を使うぶんには、上で数えたとおり供給は DiT.2 側に寄っています。自作中心なら SDXL、既存の LoRA を借りる中心なら DiT という分かれ方になります。

しないなら、毎回選び直して構いません。 縛られる理由がありません。

そのうえで、やりたいことから引くとこうなります。

やりたいこと 使うもの 理由
数を出して選別する Haruka v2 + DMD2・8ステップ・4枚まとめて 1枚あたり50で最安
決め絵を1枚仕上げる Tsubaki.2(Pro / Ultimate) 1枚ならコストを許容できる
複数キャラ・込み入った状況 Tsubaki.2 自然言語で関係を書ける
既存画像を編集する Reference Pro Tsubaki.2 は参考画像に非対応
キャラ LoRA を自作する SDXL 系 学習費1/3・時間も Tsubaki.2 比で4分の1以下
絵師タグを使う/男性キャラ Hoshino v1 公式が絵師タグへの強さを挙げている
鮮やかな色・年代タグを使う Hinata V2(NoobAI 系) 年代タグが効く系統
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公式一覧に載っていないモデルもあります

日本語のモデル概要が挙げているのは6つですが、PixAI にあるモデルはこれだけではありません。Otome や Hinata V2、Hikari は概要表に無いのに、上で見たとおり LoRA 学習ガイドの系統表には載っています。

コミュニティモデル(ユーザーがアップロードしたもの)も大量にあります。こちらは系統が書かれていないことがあるので、推奨プロンプトから逆算します。

推奨プロンプトに入っている語 系統 書き方
score_9, score_8_up... Pony 系 品質タグは効かない
masterpiece, best quality Illustrious / NoobAI 系 品質タグが効く
very aesthetic がある Illustrious 系(版は特定できない) 品質タグ+この語
newest などの年代タグ NoobAI 系 年代タグが使える

書かれていなければ、score_9 と masterpiece のどちらを推奨しているかで見当をつけてください。語を足して差を見る方法は使えません(上記)。

⚠️ 販売を考えているなら、モデルページの商用利用の可否を必ず確認してください。公式も、モデルページに個別の権限設定が記載されている場合があるとして、1件ずつ確認するよう案内しています(規約の記事)。

公式ドキュメントには日本語版があります

英語版だけだと思われがちですが、日本語版が揃っています。

ページ 内容
モデル概要 公式モデルの比較表
モデルパラメータ Steps・CFG・サンプラー
LoRA の使い方 / 応用 LoRA
プロンプトの基本 / 応用 / チートシート プロンプト
クレジット消費 / 獲得方法 / 会員プラン クレジット

⚠️ ただし系統の情報は日本語版に無く、英語ブログにしかありません。この記事で最初に挙げた表がそれです。

まだ分かっていないこと

  • Tsubaki のテキストエンコーダが何か。公開されていません。プロンプトの長さの上限も、日本語が通るかどうかも、ここで決まります(Tsubaki のプロンプト入門)
  • 画質そのものの比較。上の使い分けはコストと機能から導いたもので、出力を並べた判定ではありません。同じ被写体で両方を出し、採用できた枚数とクレジット単価を並べれば決着します

⚠️ 以前ここに挙げていた「Haruka v2 の Illustrious 版」「very aesthetic が公式の語か」「Hoshino v1/v2 が同じ系統か」は落としました。前者2つは記事自身が「版が分かっても扱いは決まらない」と既に書いていて、読者の行動を変えません。Hoshino の系統は公式ニュース記事(v2 の紹介)にも系統の明記が無く、これ以上の調査コストに見合いません。

出典

2026年9月4日確認、9月7日に Illustrious のモデルカード3版(v0.1 / v1.0 / v1.1)を引き直し、very aesthetic の出典を訂正。9月8日に、公式が Tsubaki.2 をフラッグシップとし SDXL を「従来の」と呼んでいることを冒頭に明記し、Tsubaki.2 の非対応機能8つと LoRA 供給の偏りを追記しました。9月10日に、very aesthetic の留保を「Illustrious の公式推奨としては裏が取れない」に限定(別系統の NovelAI が既定の品質タグに入れていることが分かったため)。DiT.2(Tsubaki.2)の学習時間が Tsubaki.1 より長いことも数字に反映。Tsubaki Flash が DiT 側の高速版モデルであることを確認して追記、決着済みの未確認項目を整理しました。