Tsubaki のプロンプトはどう書くか — 「自然言語が効く」理由は、公式の説明とずれている
目次(8 項目)
PixAI の Tsubaki 系は、タグではなく文章でプロンプトを書きます。公式の説明はこうです。
完全な自然言語、おしゃべりするように
タグの構文を覚える必要がない、とも書かれています。それは助かるのですが、「おしゃべりするように」だけでは何も決まりません。 どこまで書けばいいのか、何を書けば効くのか、なぜ Haruka v2 では書き方を変える必要があるのか。
そこを詰めるために、まずなぜ Tsubaki では文章が効くのかから調べました。すると、公式の説明の立て方そのものが論文と食い違いました。
「DiT だから自然言語が効く」は成り立ちません
PixAI 公式は、アーキテクチャによってプロンプトの形式が違うとしています。Tsubaki は DiT で自然言語、Haruka v2 は SDXL でタグ(モデル選びの記事)。アーキテクチャが書き方を決めているという説明です。
ところが DiT の原論文を読むと、テキストプロンプトという概念がそもそも出てきません。
our largest DiT-XL/2 models outperform all prior diffusion models on the class-conditional ImageNet 512x512 and 256x256 benchmarks
class-conditional です。この論文の DiT が受け取るのは「犬」「猫」といったラベル番号であって、文章ではありません。テキストエンコーダも登場しません。
つまり DiT というのは絵を描く側の構造の話で、言葉を読む能力とは別です。公式の言い分は結果としては当たっている(Tsubaki は実際に自然言語で書く)のですが、理由の置き場所がずれています。
では何が決めているのか
DiT を text-to-image に使った PixArt-α という研究があります。そこに答えが書いてありました。
High-informative data: We emphasize the significance of concept density in text-image pairs and leverage a large Vision-Language model to auto-label dense pseudo-captions to assist text-image alignment learning.
画像に、密な説明文を付け直してから学習させたという話です。わざわざ別のAIを使って全画像にキャプションを生成している。ここに研究上の価値があると論文が主張しているということは、自然言語が効くようになるのは、そのための手間をかけたからだということになります。
もう1本、SD3 の論文はテキスト側の扱いをこう書いています。
uses separate weights for the two modalities and enables a bidirectional flow of information between image and text tokens, improving text comprehension, typography, and human preference ratings
言葉と絵を別々に扱ったうえで、双方向にやりとりさせる。 その結果として文章の理解が上がった、と因果を明示しています。
結論はこうなります
自然言語が効くのは「自然言語で説明された画像」で学習したから。
Haruka v2 でタグが効くのも、まったく同じ理屈です。Danbooru のタグが付いた画像で学習したから、タグが効く(Danbooru の記事)。モデルは、学習時に添えられていた言葉づかいをそのまま返してきます。
これが分かると、書き方の指針が出ます。タグを文につなげるのではなく、その絵を見ていない人に説明するつもりで書く。 学習時のキャプションがそういう文章だからです。
1girl, white dress, sunflower field, from above を「1人の女の子が白いドレスを着てひまわり畑にいて、上から見た構図」と書き直しても、期待ほど効かないと考えられます。⚠️ これは上の理屈からの推論で、出して確かめてはいません。
理屈のほうはこうです。これはタグの列を日本語に翻訳しただけで、説明文にはなっていません。学習に使われたキャプションは、人(や別のAI)がその絵を見て書いた説明なので、何がどうなっているかが入っています。誰が、何をしていて、周りはどうなっていて、光はどこから来ているか。
タグは索引で、キャプションは説明です。同じ情報でも、形が違えば別の言葉づかいになります。
公式が出している2つの型
そのうえで、公式の型を見ると納得がいきます。
型1: プロンプト = 被写体 + 動作 + シーン
型2: プロンプト = 被写体 + 動作 + シーン + 雰囲気 + スタイル
「動作」が独立した項目として入っているのが特徴です。タグ方式では動作は数あるタグのひとつですが、ここでは骨格の一部になっています。説明文が「誰が何をしているか」から始まる以上、当然ではあります。
公式が挙げている型1の例文です。
pixai_mio wearing a flowing white summer dress, turning around as the breeze catches her skirt and makes it billow outward. She stands in a sunlit sunflower field with golden petals stretching endlessly toward the horizon, afternoon light warming the scene.
この例文には、見落とせない点があります
先頭が pixai_mio です。
これは英語の文章ではありません。LoRA のトリガーワード(そのキャラを呼び出すための固有の語)です。つまり公式が「完全な自然言語」と説明している例文が、タグで始まって文章で続いています。
これは矛盾ではなく、実務上そうなるということです。トリガーワードは学習時にその形で覚えさせた語なので、文の中に置いても語として働きます(キャラ固定の記事)。
書き方としては、こうなります。
- 固有の語を先に置く — トリガーワード、キャラ名、スタイル名
- そこから文章で説明する — 何をしていて、どこにいて、光はどうか
公式は同じ系統のページで、こうも書いています。
頭の中のイメージを 1〜2 文で描写してみてください
ざっくりとしたシンプルな描写ほど、想像力豊かな結果が返ってきやすいです
おしゃべりのつもりで書くと、普通は2文では終わりません。この2つは、一見ぶつかっています。
ただ上の例文を数えると、ちょうど2文でした。しかも1文が長い。「短く書け」ではなく「文の形で書け、ただし段落にはするな」と読むほうが、例文とは整合します。
そして後半の一言のほうが重要かもしれません。細かく指定するほど良くなるわけではないと公式が言っている。タグ方式でも「20個を超えると干渉する」と書かれていて(タグの基本の記事)、指定を増やすと壊れるという性質は共通しているようです。
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PixAI に登録するモードによって、書き方を変える必要があります
Tsubaki.2 には4つのモードがあり、ここに書き方を左右する制約が隠れています。
| モード | クレジット | ネガティブプロンプト |
|---|---|---|
| Lite | 2,200 | 使えない |
| Standard | 3,200 | 使えない |
| Pro | 6,800 | 使える |
| Ultimate(会員限定) | 7,000 | 使える |
公式の記述です。
ネガティブプロンプトは Pro / Ultimate モードでのみ利用可能
これは値段の話に見えて、書き方の話です。ネガティブが無いということは、避けたいものをポジティブ側で言い切るしかないということになります。
- 「背景に人を入れない」ではなく 「誰もいない教室に一人で立っている」
- 「帽子を消す」ではなく 「風で髪がそのまま見えている」
打ち消しではなく、埋めることで排除する。 文章で書ける方式なので、こういう言い換えができます。タグ方式では難しいところです。
長さについては、分かっていません
公式は「ほとんどのモデルは最大 4096 文字」としています。
SDXL 側なら、この数字の意味ははっきりしています。テキストエンコーダが一度に扱えるのは75トークンなので、それを超えた分は別のかたまりとして処理されている(タグの基本の記事)。
Tsubaki 側は、そうとは限りません。 DiT を text-to-image に使う研究では、CLIP より長い文脈を扱えるテキストエンコーダと組み合わせる例があります。ただし PixAI は Tsubaki が何を使っているかを公開していません。 だから「Tsubaki なら長く書いても大丈夫」とは言えません。
分かっているのは、公式自身が「ざっくりしたほうがよい」と書いていることだけです。長く書ける可能性はあっても、長く書くべき根拠はありません。
実務の手順
- 1〜2文で、絵を見ていない人に説明するつもりで書く。誰が、何をしていて、どこにいるか
- 固有の語(トリガーワード・キャラ名)は文の先頭に置く
- 足りなければ「雰囲気」と「スタイル」を足す(型2)。ここまでで止める
- Lite / Standard を使うなら、否定形を使わずに書き切る
- 効かない語があっても、同義語に言い換えて試す。タグと違って正解の綴りが決まっていないので、言い換えが効く可能性があります
まだ分かっていないこと
- SDXL 系に自然文を渡すと実際どうなるか。この記事もタグの基本の記事も「効きが鈍る」と書いていますが、このサイトでは出して比べていません。学習キャプションからの推論です
- Tsubaki のテキストエンコーダが何か。公開されていません。ここが分かれば、長さの上限も、日本語が通るかどうかも決まります
- 日本語のプロンプトが通るか。⚠️ Tsubaki(無印)自体では確かめていませんが、次世代の Tsubaki.3 は公式が「日本語・韓国語・繁体字中国語をそのまま入力できる」と明言しています(2026年9月9日付のプロンプト解説)。一方で公式のプロンプトチートシート(SDXL 系向け)は「多くのモデルは日本語より英語を遥かによく理解する」としていて、世代・系統によって答えが逆になります(2026年9月10日確認)
- Danbooru タグを混ぜたらどうなるか。トリガーワードが文中で働く以上、
from aboveのような構図タグも効く可能性があります。これは試す価値があります - タグ方式との出し分けの境目。込み入った状況は DiT が得意とされていますが、どこからが「込み入った」なのかは測っていません
- 公式ページの「タグベース構文」の説明。ページのタイトルには入っているのに、本文に説明がありません
最後のひとつは、このサイトが sdxl-tag-basics を書いた理由でもあります。
出典
- Tsubaki.2(PixAI公式ドキュメント) — 「完全な自然言語、おしゃべりするように」、4モードのクレジット、ネガティブは Pro / Ultimate のみ
- プロンプトの基本(PixAI公式ドキュメント) — 型1・型2の定義、
pixai_mioで始まる例文、「1〜2文で描写」「ざっくりとしたシンプルな描写ほど想像力豊かな結果」 - プロンプトの仕組み(PixAI公式ドキュメント) — 最大4096文字
- Scalable Diffusion Models with Transformers(Peebles & Xie, 2022 / arXiv 2212.09748) — DiT の原論文。class-conditional ImageNet での評価であり、テキストエンコーダを持たないこと
- PixArt-α: Fast Training of Diffusion Transformer for Photorealistic Text-to-Image Synthesis(arXiv 2310.00426) — 学習データに密な擬似キャプションを自動付与したこと、text-image pairs の concept density を重視すること
- Scaling Rectified Flow Transformers for High-Resolution Image Synthesis(SD3 / arXiv 2403.03206) — 言葉と絵に別々の重みを使い双方向にやりとりさせることで、文章の理解が上がったという記述
- Tsubaki.3 プロンプト解説(PixAI公式ブログ・2026年9月9日) — 日本語・韓国語・繁体字中国語をそのまま入力できること
- プロンプトチートシート(PixAI公式ドキュメント) — 「多くのモデルは日本語より英語を遥かによく理解する」(SDXL 系向けの汎用チートシート。Tsubaki.3 とは逆の案内)
2026年9月4日確認、9月7日に内部リンクと未検証部分の表記を修正。9月10日に、日本語プロンプトの通り方が世代・系統で逆を向いていることを追記しました。