PixAI攻略本

Danbooru とは何か — タグの件数で何が分かって、何が分からないのか

SDXL 系なぜ SDXL 中心なのか

最終更新 2026-09-07

目次(7 項目)

このサイトでは「medium shot は0件なので使えない」「bad hands は 3,357件しかない」という書き方を繰り返しています。なぜイラスト投稿サイトの件数が、画像生成の効き方の話になるのかを説明します。

先に結論を書きます。件数が使えるのは「効かない語を弾く」ときで、「どれだけ効くか」を測る道具ではありません。 何が言えて何が言えないかを、順に切り分けます。

Danbooru とは

2005年から続く、アニメ・マンガ・ゲームのイラストを集めた画像投稿サイトです(英語圏)。

特徴はタグ付けの細かさです。投稿された1枚ごとに、人の手で画像の内容を表すタグが付けられます。女の子が1人写っていれば 1girl、長髪なら long hair、笑顔なら smile という具合に、1枚に何十個も付きます。

その結果、数百万枚の画像に、統一された語彙で説明が付いたアーカイブができました。たとえば long hair は 617万枚に付いています。

⚠️ 成人向けの画像も含まれるサイトです。見に行く場合はその前提で。

なぜ画像生成と関係するのか

アニメ系の画像生成モデルの多くが、この Danbooru のタグ付き画像で学習されているからです。

画像と、その内容を説明する語がセットで大量にある。これは「この語を書いたら、こういう絵を出す」を学習させるのに理想的な材料でした。NovelAI Diffusion や Waifu Diffusion は Danbooru 由来のデータを使ったことを明言していますし、いま使われているモデルも同じです。

  • Illustrious — 公式モデルカードに "Fine-tuned on Danbooru2023 Dataset" と明記。⚠️ ただし「Danbooru タグを強く推奨する」とは書いていません(2026年9月7日に確認)。代わりに具体的な注意が書かれていて、close-up や upside-down のような競合しやすい構図タグの多用を避け、upper body / portrait / full body を使うよう案内しています
  • NoobAI-XL — Danbooru と e621 のネイティブタグで学習と明記
  • Animagine — 同じく Danbooru タグ系

つまり、こういうことになります。

モデルが確実に意味を知っている語彙 = Danbooru のタグ

日本語で「銀髪の少女が微笑んでいる」と書いても、モデルはそれを学習した語に翻訳し直すことになります。最初から 1girl, grey hair, smile と書けば、その一段が要りません。

照会すると3つ分かります

Danbooru には公開 API があり、タグ名を投げると実在するかと付与件数が返ります。ここから3つのことが分かります。

1. そのタグが実在するか

⚠️ ここは2つに分かれます。返ってくる答えが違うので、混ぜないでください。

  • タグ自体が無い — 綴りとして登録されていない
  • 項目はあるが 0件 — 登録されているが、誰も付けていない(非推奨で付けられない場合もある)

どちらも学習データには現れないので効きません。 ただし後者は「Danbooru 側が意図的に廃止した」場合があり、そのときは代替タグが指定されています。

よく見る語 API の答え
silver hair あるが0件。非推奨で、Danbooru が「grey hair(102万件)か white hair を使え」としている
hands on hips あるが0件。使われているのは hand on own hip(22万件)
medium shot あるが0件(PixAI公式が推奨しているのに)
cinematic lighting あるが0件
mutated hands poorly drawn hands タグ自体が無い
rim light natural light タグ自体が無い

2. どれだけ学習されたか(件数)

タグ 件数
long hair 617万
looking at viewer 489万
simple background 284万
bad anatomy 1.8万
bad hands 3,357
extra digits 530

4桁の差があります。

⚠️ ただし「件数が多いほど強く効く」ではありません。 このサイトの実測で、383件の golden hour が 39,287件の sunset と同じくらい効きました(構図・ライティングの記事)。件数は「効かない語を弾く」ためのフィルタで、効く語どうしの強さを比べる物差しにはなりません。

そして bad hands が効かない理由も、件数だけではありません。論文が「手に関する記述そのものをモデルが正確に理解できていない」と報告していて、語で手を指示する方式が根本的に不利です(破綻の直し方)。件数の話とは別の壁があります。

3. 正しい綴り

同じ意味でも、タグ体系で採用されている綴りは1つです。watercolor ではなく watercolor (medium)、cel shading(0件)ではなく flat color(13,735件)、という具合に。

⚠️ 綴りを直せば効く、とは限りません。 実測では flat color に替えても塗りは目立って変わりませんでした(構図・ライティングの記事)。綴りを直すのは「効かない理由を1つ消す」ことであって、効くことの保証ではありません。

落とし穴:意味が違うタグ

件数が多いのに、思っているのと違う意味のタグがあります。

PixAI 公式は顔だけを写すショットを「チョーカー」と呼んでいますが、Danbooru で choker は 617,732件の「首に着けるアクセサリ」です。そのまま書けば首輪が出ます。

件数が多いこと自体は、正しさを保証しません。 意味を確認する必要があります。

この方法の限界

正直に書いておきます。件数は目安であって、証明ではありません。

  • 現在の件数と、学習時のデータは厳密には一致しません。 モデルは特定時点のスナップショット(Danbooru2023 など)で学習しており、その後も投稿は増え続けています
  • 「件数が多い=強く効く」は成り立ちません。 相関が怪しいという話ではなく、反例が出ています。学習時の重み付けやキャプション処理まで追えないので、なぜそうなるのかも説明できていません
  • Danbooru タグでない語がゼロ効果とは限りません。 SDXL のテキストエンコーダは自然言語で事前学習されているので、ugly のような単語は普通の言葉としての意味を持ちます。ただし学習されたタグのような正確な結びつきはなく、ぼんやりした指定として働きます
  • すべてのモデルに当てはまるわけではありません。 Pony は独自のスコアタグを足していますし、Tsubaki 系(DiT)はそもそもタグ方式ではありません(モデル選びの記事)

それでも、「打っても効かない語」を事前に外せるだけで価値があります。効かない語は、書いた本人には失敗の原因として見えないからです。

自分で確かめる方法

Danbooru のサイトでタグを検索すれば件数が出ます。API なら https://danbooru.donmai.us/tags.json?search[name]=long_hair の形で直接引けます。

このサイトのプロンプトビルダーには、各タグに件数を表示してあります。0 や 530 のような語を選んでしまう前に気づけるようにするためです(6.2M と 13k のどちらが強いか、という使い方ではありません)。

出典

2026年9月3日確認。件数はすべて同日に API で取得したものです。9月7日に実在判定を引き直し、「タグ自体が無い」と「あるが0件」の区別を訂正しました(silver hair hands on hips cinematic lighting は「存在しない」ではなく「あるが0件」)。