PixAI攻略本

構図・カメラ・ライティングの指定 — 公式チートシートのどれが実際に効くか

SDXL 系なぜ SDXL 中心なのか

最終更新 2026-09-07

目次(12 項目)

PixAI 公式のプロンプトチートシートには、ライティング・光の色・被写界深度・画風・ショット種別のタグが並んでいます。そのすべてを Danbooru の API で照会したところ、半分近くが実在しないタグでした。

同じチートシートは、タグの個数についてこう書いています。

20 個を超えると干渉し合うので、絞った方が良い結果に

矛盾するタグについても、具体例つきで注意しています。

全身衣装の描写 + 顔のクローズアップ などは破綻のもと

⚠️ 先に断っておくと、公式チートシートが間違っているわけではありません。PixAI には Tsubaki 系(DiT)と Haruka / Hoshino 系(SDXL)の2系統があり、DiT は自然言語を解釈するので、Danbooru タグでない語でも通じる可能性があります。以下は SDXL 系(タグ方式)で使う場合の話です(モデル選びの記事)。

最初に:choker は書いてはいけません

公式は顔だけを写すショットを「チョーカー」と呼んでいます。ところが Danbooru で choker は 617,732件付いた、まったく別の意味のタグです。

首に着けるアクセサリのチョーカーです。

実際に出しました。Haruka v2 + DMD2・8ステップ・CFG 2・DDIM・3:5・シード固定で、変える語だけを1つずつ差し替えて出しました。(⚠️ CFG 2 は当時使っていた構成の値で、検証のために選んだものではありません。推奨として導いた 1〜1.1 はあとから出てきた値です → パラメータの記事)

しかも構図が崩れました。顔のアップにならないどころか、upper body を失ったぶん引きの絵になっています。

顔だけを写したいなら portrait(142,458件)か close-up(63,412件)を使ってください。

ショット種別

公式の呼称 タグ Danbooru 判定
全身 full body 1,275,325 ⭕ 最強
カウボーイ cowboy shot 848,246 ⭕
(公式の一覧にない) upper body 1,187,710 ⭕ medium の代わりはこれ
顔中心 portrait 142,458 ⭕
クローズアップ close-up 63,412 ⭕
ワイド wide shot 23,734 ⭕
ミディアム medium shot 0 ❌
チョーカー choker 617,732(首輪) ❌ 別物が出る

公式が「最も日常的で安定した」と推しているミディアムショットが0件です。SDXL 系では効きません。

medium shot に置き換えた1枚 では、構図がまったく制御されず、前かがみで太ももが大きく写る絵になりました。指定として働いていません。

腰から上を狙うなら upper body(118万件)が正解で、こちらは公式の一覧に載っていません。

ライティング

公式は8種類を挙げていますが、実在するのは4つだけです。

公式の推奨 Danbooru 判定
sunlight 102,236 ⭕
backlighting 45,481 ⭕ 逆光はこの綴り
dappled sunlight 15,093 ⭕ 木漏れ日
spotlight 9,418 ⭕
natural light 存在しない ❌
rim light / rim lighting 存在しない ❌
top light / overhead lighting 存在しない ❌
side back light 存在しない ❌
soft light 0 ❌
back light / backlit 0 ❌ backlighting が正
cinematic lighting 0 ❌
rembrandt lighting 2 ❌

rim light と cinematic lighting は PixAI 公式のチートシートにも載っている語ですが、Danbooru のタグ体系には無いため、SDXL 系では学習された指定として働きません。

ここは並べると一目で分かります。

代わりに使えるもの

照会して見つかった、実在する光の表現です。

タグ 件数 使いどころ
light rays 33,196 光の筋。god rays(0件)の代わり
sunbeam 13,301 差し込む光
silhouette 22,887 逆光で影絵にする
lens flare 50,437 レンズフレア
chromatic aberration 38,582 色収差

光の色

公式の推奨 Danbooru 判定
sunset 39,225 ⭕ 暖色はこれが最有力
moonlight 4,789 ○ 寒色
blue light 520 △ 弱い
golden hour 380 △ 弱い
warm lighting 0 ❌
cool lighting 存在しない ❌

⚠️ ここは予想が外れました。 件数の差から「sunset のほうがはるかに効く」と考えていましたが、実測では両方とも同じくらい効きました。

件数が100倍違っても、効きは100倍違いません。 数百件でも十分に働く語があります。件数は「効かない語を見分ける」目安にはなりますが、効く語どうしの強さを比べる物差しにはなりません。

被写界深度とフォーカス

公式の推奨 Danbooru 判定
depth of field 125,266 ⭕ 本命
motion blur 34,851 ⭕
bokeh 10,708 ○
soft focus 281 △ 弱い
shallow depth of field 存在しない ❌
deep focus 存在しない ❌

depth of field だけ書けば足ります。 「浅い」「深い」を指定する語は実在しません。

品質タグは、Danbooru では全滅します

公式チートシートの品質タグは5つ挙がっていますが、Danbooru タグとしては5つとも機能しません。効く2つは別の経路で効いています。

タグ Danbooru 効くか なぜ
masterpiece best quality 0件 ⭕ 効く モデル側が学習時に付けた品質タグだから(品質タグの記事)
highly detailed 0件 ❌ Danbooru タグでも、モデル側の品質タグでもない
sharp focus タグ自体なし ❌ 同上
intricate details タグ自体なし ❌ 同上

⚠️ ここは「件数だけ見ると判定を誤る」箇所です。 masterpiece は Danbooru で0件なのに効きます。Danbooru の件数が意味を持つのは「Danbooru タグとして使う語」だけで、モデルが学習時に別途付けたラベルはこの数え方の外にあります。

highly detailed, sharp focus, intricate details は SD1.5 時代の定型で、どちらの経路にも乗っていません。品質タグが2〜3個で十分だという公式の注意は、この意味でも正しいことになります。

画風

ここは実在するものが多く、素直に使えます。

タグ 件数
anime coloring 56,098
realistic 32,604
film grain 26,626
watercolor (medium) 22,459
flat color 13,735
painterly 10,362
photorealistic 1,791
impasto 529
cel shading 0 ❌

⚠️ 水彩は watercolor (medium) が正式なタグ名です。括弧を落とすと効きが変わります。

⚠️ 塗りの指定は、思ったほど効きませんでした。

件数があっても、画風の指定は品質タグや構図タグほど素直には効かないようです。ここは追加の検証が要ります。

構図の組み立て方は公式が有用です

タグの実在とは別に、考え方の部分は公式が的確です。公式は3つの問いで構図を組み立てるとしています。

  1. この世界には何があるか — 環境要素を選ぶ
  2. 何が起きているか — キャラの状態や動作を、環境から導く
  3. どこまで見せるか — ショット種別で情報量を配分する

順序が逆になりがちなところです。ポーズから決めるのではなく、環境を決めてからキャラの状態を導く。この順で考えると、矛盾したタグが混ざりにくくなります。

アスペクト比

  • 縦(ポートレート) — キャラが主役のとき。全身が入り、表情も読める
  • 横(ランドスケープ) — シーンが主役のとき。環境・地平線・奥行きが入る

判断基準は「本当に主役にしたいものを決めて、比率を選ぶ」。

⚠️ クレジットの観点では、縦長でも比率によって2.5倍の差があります(クレジットの記事)。実測した3つでは 9:16 がいちばん安く、3:4 がいちばん高い。公式は「正方形が最も高い」としていますが、1:1 は測っていないので確かめられていません。

矛盾を潰す

公式が挙げている、よくある矛盾です。

  • ショットとディテールの衝突 — クローズアップなのに靴の指定を入れる
  • ポーズの矛盾 — standing と sitting を同時に入れる
  • 古い属性の消し忘れ — 青いドレスを赤に変えるとき、青が残っている
  • アングルが感情を遮る — 横顔なのに表情を要求する

公式の修正方針は「語を消すのではなく、同じ意図をどう表現するかを変える」です。基本のループは、トーンを決める → 矛盾を見つける → 表現を調整する → ディテールを足す、という順になります。

まとめ:SDXL 系で使う最小セット

(ショット)   upper body / cowboy shot / full body / portrait
(カメラ)     from above / from below / from side / dutch angle
(光)         sunlight / backlighting / dappled sunlight / light rays
(色)         sunset / moonlight
(効果)       depth of field / lens flare / chromatic aberration
(画風)       anime coloring / flat color / watercolor (medium)

このサイトのプロンプトビルダーには、これらを件数つきで入れてあります。

まだ分かっていないこと

  • Tsubaki 系(DiT)でこれらの語が効くか。DiT は自然言語を解釈するので、cinematic lighting のような語が通る可能性があります。⚠️ 公式チートシート自体はモデルを限定していません(2026年9月10日に本文を確認。「PixAI のほとんどのモデルには」という汎用的な書き方)が、中身(タグを並べる・20個で干渉)は SDXL 系の作法そのもので、直接 Tsubaki 系で効くかどうかまでは答えていません
  • 画風の指定がなぜ効きにくいのか。flat color(13,735件)が塗りを変えませんでした。件数はあるので、学習時の使われ方が違う可能性があります
  • 件数がどこから足りなくなるのか。380件の golden hour は十分に効きました。下限がどこにあるのかは分かっていません

出典

2026年9月4日確認。実測20枚は同日に取得しました。件数は9月7日に再照会しています。