構図・カメラ・ライティングの指定 — 公式チートシートのどれが実際に効くか
目次(12 項目)
PixAI 公式のプロンプトチートシートには、ライティング・光の色・被写界深度・画風・ショット種別のタグが並んでいます。そのすべてを Danbooru の API で照会したところ、半分近くが実在しないタグでした。
同じチートシートは、タグの個数についてこう書いています。
20 個を超えると干渉し合うので、絞った方が良い結果に
矛盾するタグについても、具体例つきで注意しています。
全身衣装の描写 + 顔のクローズアップ などは破綻のもと
⚠️ 先に断っておくと、公式チートシートが間違っているわけではありません。PixAI には Tsubaki 系(DiT)と Haruka / Hoshino 系(SDXL)の2系統があり、DiT は自然言語を解釈するので、Danbooru タグでない語でも通じる可能性があります。以下は SDXL 系(タグ方式)で使う場合の話です(モデル選びの記事)。
最初に:choker は書いてはいけません
公式は顔だけを写すショットを「チョーカー」と呼んでいます。ところが Danbooru で choker は 617,732件付いた、まったく別の意味のタグです。
首に着けるアクセサリのチョーカーです。
実際に出しました。Haruka v2 + DMD2・8ステップ・CFG 2・DDIM・3:5・シード固定で、変える語だけを1つずつ差し替えて出しました。(⚠️ CFG 2 は当時使っていた構成の値で、検証のために選んだものではありません。推奨として導いた 1〜1.1 はあとから出てきた値です → パラメータの記事)
- 基準(
upper body) — 教室で上半身 chokerに置き換えた1枚 — 首に黒いチョーカーが出ました
しかも構図が崩れました。顔のアップにならないどころか、upper body を失ったぶん引きの絵になっています。
顔だけを写したいなら portrait(142,458件)か close-up(63,412件)を使ってください。
ショット種別
| 公式の呼称 | タグ | Danbooru | 判定 |
|---|---|---|---|
| 全身 | full body |
1,275,325 | ⭕ 最強 |
| カウボーイ | cowboy shot |
848,246 | ⭕ |
| (公式の一覧にない) | upper body |
1,187,710 | ⭕ medium の代わりはこれ |
| 顔中心 | portrait |
142,458 | ⭕ |
| クローズアップ | close-up |
63,412 | ⭕ |
| ワイド | wide shot |
23,734 | ⭕ |
| ミディアム | medium shot |
0 | ❌ |
| チョーカー | choker |
617,732(首輪) | ❌ 別物が出る |
公式が「最も日常的で安定した」と推しているミディアムショットが0件です。SDXL 系では効きません。
medium shot に置き換えた1枚 では、構図がまったく制御されず、前かがみで太ももが大きく写る絵になりました。指定として働いていません。
腰から上を狙うなら upper body(118万件)が正解で、こちらは公式の一覧に載っていません。
ライティング
公式は8種類を挙げていますが、実在するのは4つだけです。
| 公式の推奨 | Danbooru | 判定 |
|---|---|---|
sunlight |
102,236 | ⭕ |
backlighting |
45,481 | ⭕ 逆光はこの綴り |
dappled sunlight |
15,093 | ⭕ 木漏れ日 |
spotlight |
9,418 | ⭕ |
natural light |
存在しない | ❌ |
rim light / rim lighting |
存在しない | ❌ |
top light / overhead lighting |
存在しない | ❌ |
side back light |
存在しない | ❌ |
soft light |
0 | ❌ |
back light / backlit |
0 | ❌ backlighting が正 |
cinematic lighting |
0 | ❌ |
rembrandt lighting |
2 | ❌ |
rim light と cinematic lighting は PixAI 公式のチートシートにも載っている語ですが、Danbooru のタグ体系には無いため、SDXL 系では学習された指定として働きません。
ここは並べると一目で分かります。
cinematic lightingを足した1枚— 0件。基準とほぼ同じで、映画的な光にはなりませんbacklightingを足した1枚— 45,481件。髪の輪郭に光が回り、逆光になりました
代わりに使えるもの
照会して見つかった、実在する光の表現です。
| タグ | 件数 | 使いどころ |
|---|---|---|
light rays |
33,196 | 光の筋。god rays(0件)の代わり |
sunbeam |
13,301 | 差し込む光 |
silhouette |
22,887 | 逆光で影絵にする |
lens flare |
50,437 | レンズフレア |
chromatic aberration |
38,582 | 色収差 |
光の色
| 公式の推奨 | Danbooru | 判定 |
|---|---|---|
sunset |
39,225 | ⭕ 暖色はこれが最有力 |
moonlight |
4,789 | ○ 寒色 |
blue light |
520 | △ 弱い |
golden hour |
380 | △ 弱い |
warm lighting |
0 | ❌ |
cool lighting |
存在しない | ❌ |
⚠️ ここは予想が外れました。 件数の差から「sunset のほうがはるかに効く」と考えていましたが、実測では両方とも同じくらい効きました。
golden hourを足した1枚— 380件。はっきり夕暮れになりましたsunsetを足した1枚— 39,225件。同じく夕暮れ
件数が100倍違っても、効きは100倍違いません。 数百件でも十分に働く語があります。件数は「効かない語を見分ける」目安にはなりますが、効く語どうしの強さを比べる物差しにはなりません。
被写界深度とフォーカス
| 公式の推奨 | Danbooru | 判定 |
|---|---|---|
depth of field |
125,266 | ⭕ 本命 |
motion blur |
34,851 | ⭕ |
bokeh |
10,708 | ○ |
soft focus |
281 | △ 弱い |
shallow depth of field |
存在しない | ❌ |
deep focus |
存在しない | ❌ |
depth of field だけ書けば足ります。 「浅い」「深い」を指定する語は実在しません。
品質タグは、Danbooru では全滅します
公式チートシートの品質タグは5つ挙がっていますが、Danbooru タグとしては5つとも機能しません。効く2つは別の経路で効いています。
| タグ | Danbooru | 効くか | なぜ |
|---|---|---|---|
masterpiece best quality |
0件 | ⭕ 効く | モデル側が学習時に付けた品質タグだから(品質タグの記事) |
highly detailed |
0件 | ❌ | Danbooru タグでも、モデル側の品質タグでもない |
sharp focus |
タグ自体なし | ❌ | 同上 |
intricate details |
タグ自体なし | ❌ | 同上 |
⚠️ ここは「件数だけ見ると判定を誤る」箇所です。 masterpiece は Danbooru で0件なのに効きます。Danbooru の件数が意味を持つのは「Danbooru タグとして使う語」だけで、モデルが学習時に別途付けたラベルはこの数え方の外にあります。
highly detailed, sharp focus, intricate details は SD1.5 時代の定型で、どちらの経路にも乗っていません。品質タグが2〜3個で十分だという公式の注意は、この意味でも正しいことになります。
画風
ここは実在するものが多く、素直に使えます。
| タグ | 件数 |
|---|---|
anime coloring |
56,098 |
realistic |
32,604 |
film grain |
26,626 |
watercolor (medium) |
22,459 |
flat color |
13,735 |
painterly |
10,362 |
photorealistic |
1,791 |
impasto |
529 |
cel shading |
0 ❌ |
⚠️ 水彩は watercolor (medium) が正式なタグ名です。括弧を落とすと効きが変わります。
⚠️ 塗りの指定は、思ったほど効きませんでした。
cel shadingを足した1枚— 0件。塗りは変わりません(予想どおり)flat colorを足した1枚— 13,735件。こちらも塗りは目立って変わりませんでした
件数があっても、画風の指定は品質タグや構図タグほど素直には効かないようです。ここは追加の検証が要ります。
構図の組み立て方は公式が有用です
タグの実在とは別に、考え方の部分は公式が的確です。公式は3つの問いで構図を組み立てるとしています。
- この世界には何があるか — 環境要素を選ぶ
- 何が起きているか — キャラの状態や動作を、環境から導く
- どこまで見せるか — ショット種別で情報量を配分する
順序が逆になりがちなところです。ポーズから決めるのではなく、環境を決めてからキャラの状態を導く。この順で考えると、矛盾したタグが混ざりにくくなります。
アスペクト比
- 縦(ポートレート) — キャラが主役のとき。全身が入り、表情も読める
- 横(ランドスケープ) — シーンが主役のとき。環境・地平線・奥行きが入る
判断基準は「本当に主役にしたいものを決めて、比率を選ぶ」。
⚠️ クレジットの観点では、縦長でも比率によって2.5倍の差があります(クレジットの記事)。実測した3つでは 9:16 がいちばん安く、3:4 がいちばん高い。公式は「正方形が最も高い」としていますが、1:1 は測っていないので確かめられていません。
矛盾を潰す
公式が挙げている、よくある矛盾です。
- ショットとディテールの衝突 — クローズアップなのに靴の指定を入れる
- ポーズの矛盾 —
standingとsittingを同時に入れる - 古い属性の消し忘れ — 青いドレスを赤に変えるとき、青が残っている
- アングルが感情を遮る — 横顔なのに表情を要求する
公式の修正方針は「語を消すのではなく、同じ意図をどう表現するかを変える」です。基本のループは、トーンを決める → 矛盾を見つける → 表現を調整する → ディテールを足す、という順になります。
まとめ:SDXL 系で使う最小セット
(ショット) upper body / cowboy shot / full body / portrait
(カメラ) from above / from below / from side / dutch angle
(光) sunlight / backlighting / dappled sunlight / light rays
(色) sunset / moonlight
(効果) depth of field / lens flare / chromatic aberration
(画風) anime coloring / flat color / watercolor (medium)
このサイトのプロンプトビルダーには、これらを件数つきで入れてあります。
まだ分かっていないこと
- Tsubaki 系(DiT)でこれらの語が効くか。DiT は自然言語を解釈するので、
cinematic lightingのような語が通る可能性があります。⚠️ 公式チートシート自体はモデルを限定していません(2026年9月10日に本文を確認。「PixAI のほとんどのモデルには」という汎用的な書き方)が、中身(タグを並べる・20個で干渉)は SDXL 系の作法そのもので、直接 Tsubaki 系で効くかどうかまでは答えていません - 画風の指定がなぜ効きにくいのか。
flat color(13,735件)が塗りを変えませんでした。件数はあるので、学習時の使われ方が違う可能性があります - 件数がどこから足りなくなるのか。380件の
golden hourは十分に効きました。下限がどこにあるのかは分かっていません
出典
- プロンプトチートシート(PixAI公式) — 6カテゴリのタグ一覧、よくあるミス5項目
- プロンプト応用(PixAI公式) — ショット種別、アスペクト比、構図の3つの問い、矛盾の修正ループ
- Danbooru tags API — 公式チートシートに載っている全タグの実在と付与件数(2026-09-03 取得)。2026年9月7日に全50語を引き直し、判定はすべて変わらず(件数の増加は0.1〜0.5%)
2026年9月4日確認。実測20枚は同日に取得しました。件数は9月7日に再照会しています。